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外国人はじめての会社設立(株式会社)
2019-01-14
外国人がはじめて日本で会社を設立する場合、8~9割の方が「株式会社」を選択します。
設立費用は合同会社よりもかかりますが、日本では依然として株式会社への信頼度が高いため、取引先やお客様の信用を得るために、株式会社の設立を選択するという外国人の方は多いようです。
アメリカのLLCのようにパススルー課税という税制上の優遇はないので、合同会社を選択する方は1~2割にとどまります。無限責任である合名会社、合資会社を作る方はほぼいません。
ここでは外国人の方がはじめて「株式会社」を設立をする際の準備と設立前後の流れについてかんたんに説明しています。
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外国人はじめての会社設立(株式会社)
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日本では観光ビザなど3カ月未満の短期滞在者に対して、銀行が口座を開設することはありません。多くの銀行では6カ月以上の中長期滞在者に対してのみ口座を開設しているところがほとんどです。
また、会社を設立し経営管理ビザを取得する場合、事務所の設置がその要件となっているので、事務所を確保するためには不動産会社等と事務所の賃貸借契約を結ぶ必要があります。
その際に、そもそも外国人に対して賃貸借契約の締結を躊躇する不動産会社が多い上に、契約を締結できる会社が見つかったとしても、契約の際には住所や印鑑登録証明書、実印といったものを求められることが多く、短期滞在で来日してもこれらを取得することができません。
ですので、海外に在住の外国人の方が1人で日本で会社設立をして起業しようとすることが実質不可能に近く、その場合は信頼のおける日本在住のビジネスパートナーなどに設立時代表取締役などに就任してもらうなど、協力者として動いていただくことがスムーズな方法です。当事務所でもこの方法をおすすめしております。
はじめての株式会社設立の流れ
それでは株式会社の設立を順を追って見ていきましょう。
ここでは大まかな株式会社設立から経営管理ビザ取得への流れをつかんでいただき、概略を頭に入れていただければと思います。それぞれの詳細につきましては、同サイト内で詳しく説明しているものもあるので、そちらをご参照ください。
Step1 株式会社の基本事項決定
会社を作るにあたっては、以下のような事項を決めます。
・会社名(商号
・会社住所
・事業目的
・発起人(株主)
・発起人の出資額
・役員構成
・許認可が必要なビジネスか調査
■会社名のルールについて
1.文字制限
ほとんどの文字は使用できますが、字句を区切る目的として使用する「 .」(ピリオド)や「・」(中点)は原則として商号の先頭、末尾に使用することはできません。省略を意味する「 .」(ピリオド)は末尾に使用できます。
【会社名に使える文字】 ・漢字 【会社名に使えない文字】 ・中国語の簡体字 |
2.記載形式
会社名のルールについて、会社名(商号)の中に「株式会社」を入れます。これは社名の後でも先でもよいので、例えば「ソニー株式会社」でも「株式会社ソニー」でも構いません。自由に決めることができます。
■会社住所について
まず最初に会社住所を決める必要があるので、この時点で事務所を借りるのか、それとも一時的に自宅に会社住所を置くかを決める必要があります。
一時的にというのは、自宅を会社住所とすることは可能ですが、経営管理ビザ申請の要件は「住む場所と事務所は分ける」ことですから、ビザ申請時には例外(※)を除き、事務所所在地を変更しなければならないケースも出てきます。費用もかかりますので、のちのちの経営管理ビザ取得を視野に入れた事務所選びが必要です。
※戸建てで明確に1階と2階とで分かれているようなケースでは、許可が下りることもあります。マンションの1室は不可です。
事務所について詳しくはこちら
■事業目的について
会社設立する際には、定款に事業目的を定める必要があります。定款に定めた事業目的は、会社の登記事項証明書にも記載されることになります。
事業目的は
「具体的であること」
「明確であること」
「適法であること」
など一定のルールがあります。
基本的には会社設立後にすぐ行おうとする事業目的を記載すればよいのですが、すぐには行わないけれども将来に行う予定の事業があれば、前もって入れておいてもかまいません。(後で事業目的を追加したり、削除したりするときは、法務局への登録免許税が3万円かかることになります。)
事業目的で重要なのは、許認可ビジネスを行おうとする場合には事業目的にしっかり記載しておかないと、原則としてその許可が取れないということです。例えば中古自動車輸出ビジネスをしたい場合には、「古物営業法に基づく古物商」「中古自動車の買い取り、販売及び輸出入」などと事業目的に定める必要があります。
また、何の事業をする会社であるか一目で分かるように、通常メインとなる事業は一番最初に書きます。
事業計画書の作成
事業計画書とは、ビジネスプランのことで、日本であなたがやりたいビジネスの詳細を記した重要な書類です。
会社を設立する場合に提出が必要ではありませんが、会社を設立後、経営管理ビザを取得する際には必ず入管へ提出します。
日本語で作成しなければならないことと、今後の損益計算や業務提携先、販売促進方法など多岐にわたって詳細に記載が必要なので、どうしても後回しにしたいお気持ちも分かります。
ですが、あなたの目的は会社を設立することでもなければ、ビザを取得することでもないはずです。起業してビジネスで成功することが目的ではないでしょうか?
経営管理ビザは確かに学歴も職歴も求められない代わりに、現在では入管の経営管理ビザの審査がかなり厳格化しています。他に取得できるビザがないからとか何となく起業してみたいという動機ではビザはおりません。
経営管理ビザは会社を設立し、場合によっては店舗を借りて内装工事も完了した時点で申請するので、不許可になった場合のリスクがとても大きいビザです。時間もお金も無駄にしてしまう可能性があります。
とても厳しいことを書きましたが、当事務所でもある程度ビジネスプランがしっかりしているお客様については、何としてもビザを取得して日本でのビジネスを成功していただきたいという気持ちになります。
会社定款を作成する際にもスムーズですし、ビザ申請時には結局作成しなければならない書類です。そして将来金融機関から事業資金の融資をお考えの場合にも必須の書類となるので、相談前にある程度の草案を作成しておくと具体的なアドバイスをもらえると思います。ぜひチェレンジして作成してみてはいかがでしょうか? |
会社設立・経営管理ビザの相談予約はこちら
※事業計画書の草案がある方につきましては、オプションにて当事務所で作成致します。
Step2 定款を作成
上記基本事項を盛り込んだ4~5ページ程度の定款を作成します。
ワードを使用しての作成で十分ですが、定款には記載すべき事項(絶対的記載事項)が決まっており、この事項に記載漏れがあると定款が無効になってしまうのでしっかりと記載します。
定款は、社名・所在地・事業目的・資本金額・役員構成・決算期等、会社の重要事項を定める書類で、「会社の憲法」などと呼ばれたりします。会社のルールブックとも言えますね。
定款の草案が出来上がった時点で、会社登記をお願いする司法書士や、公証人に事前にチェックしてもらうようにすると、認証がスムーズに運びます。
チェックが終わり、問題がないようでしたら出来上がった定款を公証役場で認証してもらいます。
Step3 公証役場で定款を認証
定款は公証役場に持って行き、公証人の認証を受ける必要があります。
公証役場では、公証人手数料5万円+謄本交付料実費約2,000円が必要です。公証は1日で終わります。
行政書士などの士業に依頼した場合には電子定款にも対応しているので、ワードで作った定款であればPDFにし、電子署名をし、公証役場へ送付できるようにしてくれるところが多いです。このように電子定款を使うと、支払うべき印紙税4万円が無料になるというメリットがあります。
公証役場でかかる費用をまとめると、以下のようになります。 ・定款認証手数料:5万円 |
Step4 資本金振り込み
資本金の振り込みについてですが、ここは特に注意を要します。
振込先は発起人の「個人口座」で、必ず公証役場での「定款認証が終わった後」です。海外から送金により振り込みをする場合には、振り込む日付にもご注意ください。
なお、発起人の個人口座は、「日本の銀行の口座」である必要があります。「海外銀行の日本支店の口座」でも可能です。「日本の銀行の海外支店の口座」は不可です。このように振り込み先が限定されているので、日本に銀行口座を持っていない方は、単独で会社設立をすることは現実的にはできません。もちろん観光など短期滞在で日本に来ても、マネーロンダリングの観点から銀行口座は開設できないようになっています。
このような背景があるため、会社設立にあたっては日本国内に協力者が必要になります。
資本金で問われる出所についてはこちら
Step5 法務局へ法人設立登記(会社設立)
設立登記に必要な登記申請書類一式を作成し、法務局へ法人設立登記と会社代表印の登録を行います。登記申請日が会社設立日となりますので、設立日を決めている場合には注意してください。
印鑑についてはこちら
特に補正がない場合には登記申請日から約1週間ほどで「登記事項証明書(登記簿謄本)」が取得できるようになります。株式会社の登記申請には、法務局登録免許税の実費がかかります。費用は以下のいずれかです。
・資本金額の7/1000
・資本金額の7/1000が15万円に満たない場合は15万円
【例】 ・資本金3,000万円の場合 このような計算ですので、資本金が2,100万円を超えない場合は15万円と覚えておいてください。 |
つまり最低15万円は必要になります。
参考までに資本金を1,000万円未満で会社を設立すると原則2年間は消費税が免除となります。1,000万円にすると免除とならないため、999万円以下の資本金に設定する外国人の方が多いようです。
Step6 税務署へ各種届出
「法人設立届」
「給与支払事務所棟の開設届」
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」
など、各種税務署に届け出るべき申請をします。なお、税務署への届出の控えは、経営管理ビザ申請時に添付するので必須となります。
Step7 許認可取得(必要な場合のみ)
許認可、とは「許可」+「認可」を合わせた造語で、海外でいうところのライセンスのようなものです。
会社を設立する前にご自分がどういうビジネスをしたいか頭の中にあると思いますので、そのビジネスを日本でやる場合に、「許認可は必要なのかな?」ということを事前に調べておいてください。この許認可を取得していないと経営管理のビザはおりません。
経営管理のビザをを取得してから許認可を取得するのではなく、原則、許認可を取得してから経営管理ビザ申請の順番です。
日本には許認可が必要なビジネスが1万種類以上あると言われています。外国人の方が日本でビジネスをするときに取得することが多い許認可ビジネスは、以下のものです。
・飲食店
・中古品販売
・中古自動車貿易
・人材紹介派遣業
・旅行業
・免税店
・不動産業
・建設業
【中古品販売の例】 日本で中古品を仕入れて海外に輸出する場合は、「古物商許可」が必要になります。古物商許可が必要なのは、中古品を海外に輸出する場合だけではなく、下記のような場合にも古物商許可が必要となります。
1 古物を買い取って売る 5 古物を別の物と交換する
なお、これらの行為をインターネット上で行う場合も古物商許可が必要です。
古物商許可を受けるためには、営業所を管轄する警察署を経由して都道府県の公安委員会に対して古物商許可申請をしなければなりません。 |
事前に許認可が必要か調べ、会社設立が終わったら営業許可申請を他の手続きと同時に進めてください。実際には経営管理ビザ申請は、許認可が取得出来ていなくても受け付けてくれます。つまり申請自体は受理してもらえます。
ですが、もし時間的余裕があるのでしたら許認可を取得済みの状態で経営管理ビザ申請が理想です。許認可を取得せずに経営管理ビザの申請自体受け付けてくれたとしても、途中で入国管理局から追加書類通知が来ることが予想されますし、許認可の進捗状況次第では不許可ということも最悪考えられます。
飲食店など店舗ビジネスの場合、内装工事が思うように進まず、営業許可取得を後ろ倒しにしたいと考える外国人の方もいます。その場合には、事業計画や別途工事工程表などを添付し、xxまでに営業許可書取得見込みであることを明記した上で経営管理ビザを申請し、できるだけ早い時期に営業許可書を入国管理局に提出してください。
Step8 経営管理ビザ申請
在留資格申請書、事業計画書、その他の各種証明書を準備した後に、入国管理局は経営管理ビザの申請を行います。このことからも分かる通り、経営管理ビザの申請は、すべての準備を完了させてからでないとできません。そしてすべての準備を完了させてから行うものであるため、失敗した場合のリスクの大きなビザ申請とも言えます。
Step9 ハローワーク等各種届出
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