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株式会社と合同会社の比較(外国人会社設立)
2019-04-21
外国人が日本で会社設立をする場合、株式会社又は合同会社のどちらかを法人形態として選択することがほとんどです。ここでは株式会社と合同会社をかんたんに比較してみることにします。
Contents
株式会社と合同会社の比較
合同会社と株式会社の大きな違いは、法人を構成する機関の作り方と出資の方法が違うということです。事業内容に関しましては、いずれの形態で会社を設立してもそれほど大差はないかと考えます。
設立コスト、維持コストなどは株式会社に比べて合同会社のほうが安く抑えられますが、知名度については株式会社のほうが依然として高いのは間違いありません。ただ、昨今は合同会社の知名度も上がってきていますので、合同会社を選択される方も増加傾向ではあります。
1人ではなく多くの人が出資する場合、出資比率に応じて議決権を与えたり、出資比率に応じた利益配当を行いやすい株式会社のほうが適していると言えます。
なお、合同会社をLLC(※)と省略することもありますが、日本の合同会社は米国のLLCと異なりパススルー課税ではないため、LLCという名称だけで判断をすると、発起人が考えていた課税制度とは異なる税務処理となってしまうこともあるので注意が必要です。
※LLC:Limited Liability Company
合同会社とは
合同会社は,2006年に設けられた会社の形態でLLCと称されることもあります。会社法の中でも持分会社という種類に分類され、どちらかといえば人的要素が重要視されます。また、合同会社の法的性質は、間接有限責任となっているので、債権者からの請求に対し、出資額以上の責任を負うことはありません。
そして合同会社の場合、株式会社に適用される「所有と経営の分離」という原理の適用がありませんので会社の所有者が経営を行います。言い換えれば、合同会社の場合、出資者が誰であるかがということがとても重要な問題となります。
合同会社の特徴の一つとして、出資を金銭ではなく技能・技術などの金銭以外のもので代用することが出来るということがあげられます。
合同会社のメリット
■設立コストが安い
設立費用に関しましては株式会社よりも合同会社の方が安いのは間違いありません。登録免許税でいえば株式会社に比べ9万円は抑えられます。株式会社を設立するとなるともろもろで25万円程度はかかりますので、設立費用に関しては大きな違いがあります。
■定款認証不要など手続きが簡素
合同会社の設立の場合は株式会社と異なり所有と経営が分かれていないため、定款認証の手続きが扶養であったり、より簡素な手続きで済むようになっています。
■期間設計に柔軟性
合同会社の場合、組織設計が柔軟に決めることが出来るという性質を持っています。株式会社でいうところの株主総会や取締役会からの承認は必要がなく、相対的にスムーズな経営の意思決定を反映することができることがメリットといえます。
■利益分配の自由度
合同会社は人に重きを置く会社の形態ですので、必ずしも出資額が問題となるわけではなく、社員の取決めにより自由に利益額を決定することが出来ます。
合同会社のデメリット
■社会的信用
合同会社は、株式会社と比べて信用性が落ちてしまいます。合同会社の設立件数は近年伸びてきているとはいえ、例えばメガバンクなどにおける信用性は断然株式会社に軍配が上がります。当然株式会社と比べると簡易的であるので信用力が相対的には弱くなります。
■資金調達
まず合同会社においては、上場という概念はありません。一方で株式会社のメリットのひとつに多くの人に株式を発行して多額の資金を集めるということがあげられます。資金を集めることにより、広く経営力を発揮することができ、その手段として株式上場をすることもできます。
■経営の安定性
人に重きを置くという会社の形態は、時として組織内でもめごとが起こったような場合に経営に悪影響及ぼすとも言えます。ですので、常に安定した経営体制を構築しておくことが求められ、また、経営者が退陣するような場合には持ち分としての出資金が返金されることになりますので、そのことを想定しておくことも必要とされます。
株式会社とは
起業をして会社をつくるという場合に、最もイメージしやすいのが株式会社ではないでしょうか。現在では、フリーランスなどの制度も整ってきてはいますが、株式会社により事業を運営する方が対外的にも信用性が認められやすく、取引が円滑に進みやすいといえます。
株式会社の法的性質は、合同会社と同じく間接有限責任となっています。つまり、出資額以上の法的責任を負わなくても良いという仕組みになっています。また、株式会社では「所有と経営の分離の原理」が採用されていますので、出資者が直接的に経営をする必要はなく、経営を行う者は別に用意すれば良いことになります。ただし、現実的には中小企業の場合、出資者がそのまま経営者である場合は少なくありません。
株式会社のメリット
■社会的信用性
起業をする際に誰もがイメージするのは株式会社が多いかと思います。もちろん現在では、フリーランスや合同会社を設立する方も多くいらっしゃいますが、株式会社を設立して事業を運営することは対外的に信用性が認められやすく、取引が円滑です。
■資金調達
起業をする方法としては、個人事業(フリー)と法人の2つの形態がありますが、フリーランスのままだと確定申告の際に経費とすることができる範囲に限りがあります。節税効果という意味においては法人の形態にしておくとにメリットがあります。
■税制面の優遇
税金は累進課税の仕組みが採られていますので、売上げを上げれば上げるほど、税金が大きくなる仕組みです。事業が軌道に乗り売り上げが上がるにつれその税額は大きくなります。
法人を設立する場合、個人に適用される税制と比べて、一定額以上の売上げでは法人の方が納める税金額が少なくなるようにできています。それはつまり、大きな売り上げを出す事業に成長するほどより多くの利益を残すことが出来るということです。
株式会社のデメリット
■煩雑な設立手続き
まず株式会社設立には定款の認証を始めとする煩雑な手続きが必要となることと、合同会社に比べれば設立コストも多くかかります。また、機関設計も複雑になるため、必要とされる書類の量も確実に多くなるというデメリットはあります。
■社会保険などのコスト
法人の場合には従業員に対して、各種社会保険などのお金を支払わなければいけないという制度上のコストがかかり、従業員を手厚く保護することが求められます。当然従業員にとっては働きやすい形態と言えますが、経営サイドから考えれば、コストがかかる制度といえます。もちろんその制度があるからこそ従業員が安心して働くことができ、人が集まるという面もあります。
■税金徴収
株式会社の場合には、赤字を出したとしても一定額の法人の税金を支払わなければいけないことになっています。フリーランスとは異なり、マイナス収支にもかかわらず税金を徴収されるのは大きな損失となってしまうでしょう。
【合同会社と株式会社の比較表】
合同会社 | 株式会社 | |
商号 | 「合同会社」という名称を入れること | 「株式会社」という称号を入れること |
設立時最低出資額 | 1円以上 | 1円以上 |
出資責任者 | 有限責任 | 有限責任 |
出資者の議決権数 | 1人1票 | 1株1票 |
決算公告 | 不要 | 必要(毎年) |
略称 | (合) | (株) |
代表者 | 代表社員 | 代表取締役 |
最低必要人数 | 1名 | 1名 |
役員任期 | 期限なし | 取締役:1~10年 (非公開会社) 監査役:4~10年 (非公開会社) |
法人名義での契約 | できる | できる |
設計の自由度 | 高い | 高くはない |
設立費用 | ※6万円 | ※20万円~ |
知名度・信用 | 高くはない | 高い |
※自分で電子定款認証し、かつ、専門家に依頼しなかった場合の金額です。
日本の合同会社とLLCの比較
米国のLLCはいわゆるパススルー課税を選択できるのに対し、日本のLLC(合同会社)は法人課税のみです。
米国のLLC(Limited Liability Company)をモデルとして導入したとされる合同会社は英語で表現すると同じくLLC(Limited Liability Company)となります。これは、合同会社社員が出資した分を限度として会社の債務について責任を負うとされています。
ただし日本の合同会社と米国のLLCの大きく異なる点として、米国のLLCは、出資者が有限責任であることや、法人格を有している点では共通していますが、日本の合同会社は法人課税であるのに対し、米国のLLCはパススルー課税を選択できる点があげられます。外国人の中には米国のLLCと同じ制度だと勘違いされて合同会社を選択される方がいますが、課税制度が異なりますので注意が必要です。
合同会社と株式会社どちらがよいの?
あなたが起業をして最終的に会社を上場させたいと考えていらっしゃるのであれば、株式を発行して資金調達をすることが出来る株式会社を選ぶことになるかと思います。一方で慎重に事を運びたい、コストを抑えて事業を行いたいというのであれば、合同会社にする方が確かにコストを抑えて手続きをすることが出来ます。ただし、将来的に株式会社への変更を考えていらっしゃるようでしたら最初から株式会社の設立をしたほうが、トータルコストは抑えられることになります。
どちらの形態を選択するかは、あなたの目的のイメージがどちらの法人によって実現しやすいのかということにかかってきます。日本で起業される外国人の方は、9割以上が株式会社を選択されるようですが、必ずしもそれがあなたにとってのベストではない可能性もありますので、じっくりと検討されることをおすすめします。
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