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「特定技能」ビザと「技能実習」ビザの違いとは
2021-06-02
特定技能と技能実習の違いはどこにあるのでしょう?
実はこれらの2つの制度は似て非なるもので、さまざまな違いがあります。
ここでは特定技能と技能実習の違いを表にして比べることで、違いを把握し、外国人を雇用する雇用主様がどちらの制度を利用して雇用すべきかのヒントを提供していますのでご活用ください。
「特定技能」と「技能実習」の違い
技能実習 | 特定技能 | |
目的 | 国際技能移転、国際協力 | 日本の人手不足解消 |
在留資格 | 「技能実習」 | 「特定技能」 |
在留期間 | 1号:1年以内 | 1号:通算5年 2号:制限なし |
行政手続 | ・法務大臣による在留資格審査 | ・法務大臣による在留資格審査 (支援計画策定含む) ・地方出入国在留管理局への就労 状況・支援状況の届け出 |
受入れ対象 | 見習い・未経験者等 | 即戦力・技能実習2号修了レベル (技能検定3級+日本語N4レベル) |
転職 | 原則不可 | 自発的意思に基づく転職は可能 (1号特定技能外国人が転職する際にハローワークを利用する場合は、ハローワークにおいて適切な職業相談・職業紹介を行う) |
家族帯同 | 1・2・3号いずれも不可 | 1号:不可、2号:可 |
人材紹介を行う主体 | 監理団体からの人材紹介 | 【例】建設業 一般社団法人建設技能人材機構による人材紹介を受けることが可能(義務ではない) ※有料職業紹介事業者からの紹介は不可 |
受入費用 | 監理団体への監理費の納入 (訓練・教育に別途経費が掛かる場合あり) | 【例】建設業 機構に対する受入れ負担金の納入 |
監理 | 監理団体による訪問指導 | 適正就労管理機関による巡回指導受入れ |
送出機関 | 外国政府の推薦又は認定を受けた団体 | なし |
入国時の試験 | なし(介護職種のみ入国時N4レベルの日本語能力要件あり) | 技能水準・日本語能力水準を試験等で実施(技能実習2号を良好に修了した者は試験等免除l) |
法令 | ・外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律 | ・出入国管理及び難民認定法 |
受入れ可能 業種 | 1号:原則制限なし (令和2年2月25日時点) | 1号: ①介護
※建設及び造船・舶用工業の2分野のみ2号特定技能へ移行可能です。 ※※農業及び漁業は派遣形態が認められています。 |
活動内容 | 1号:技能実習計画に基づいて講習を受け、技能などにかかる業務に従事する活動 2号・3号:技能実習計画に基づいて技能等を要する業務に従事する活動 | 相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動 |
技能水準 | なし | 1号:相当程度の知識又は経験を必要 |
受入人数 | ・企業規模ごとに受け入れ方法(団体監理型・企業単独型)や常勤職員数に応じた人数枠あり | ・原則企業ごとの受入れ人数枠はない |
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受入れ目的
まず特定技能と技能実習との大きな違いは受入れ目的です。技能実習制度の趣旨というのは、日本で修得した技術・技能の発展途上国への移転です。
技能実習
受け入れる人材は、入国時には技能を持っていなくても、技能実習2号の場合であれば3年間で技能検定3級相当の技能を、技能実習3号の場合であれば5年間で技能検定2級相当の技能を身に付ければよいことになっています。
入国時には最低限の日本語教育が求められますが、技能を習得するのは入国後になります。そして日本で修得した技術・技能を本国へ持ち帰り、それらを本国で伝播するということが目的となっています。
特定技能
一方で特定技能は、すでに相当程度以上の知識又は技能を持っているものであることが必要です。1号特定技能の外国人は、技能検定3級相当以上の技能を有し、かつ、日本語能力試験N4 以上の能力を有するといういわば「即戦力」が求められるところが違いとなります。
そしてこの特定技能制度の目的は、生産性向上や国内人材確保の取り組みを最大限行ってもなお人手不足が深刻な産業分野のための人手不足解消なので、その目的から技能実習とは大きく異なります。
受け入れ方法
次に両者の受入れ方法についての比較です。
技能実習
技能実習制度における団体監理型では、海外の送り出し機関と提携関係を有する監理団体から実習生の紹介を受けて雇用する以外の方法がありませんでした。
特定技能
一方で、特定技能制度においては、特定技能外国人材は上記の通り即戦力の人材の受入れです。労働法関係は日本人と同様に適用されますので、求人求職ルート制限がなく、受入れ企業自らが直接採用をするということが可能となりました。
転職について
技能実習
技能実習生の場合、実習先を変更しようとすると、実習実施者である雇用先の企業、監理団体の了解を得たうえで、技能実習計画の変更認可の取得など、様々な手続きを経る必要があり、事実上外国人の意思に基づく転職は難しいのが実情でした。
特定技能
一方で、特定技能制度では、在留資格変更の手続きさえ踏みさえすれば、外国人の意思による転職は、日本人と同様に制限されないこととなります。したがって、技能実習2号の実習を就労した後は、外国人の意思によって他の企業に転職することも可能となりますので、外国人にとっては、就職機会が増えるというメリットがあるでしょう。
他方で、雇用している企業からすれば、技能実習でせっかく育てた外国人材が他に転職してしまう、引き抜かれてしまうといった懸念が生じることもあると思います。
特定技能では、特定技能外国人受入れ事業実施法人の定める行動規範により、悪質な引き抜きは禁止されていますが、今回の特定技能の制度趣旨が、日本人と比較して差別的な扱いをしないという前提にある以上、企業は、以前にも増して、外国人とコミュニケーションを密にし、外国人の良好な就労環境や処遇に注力する必要があります。
なお、送り出し国の国内法制によっては、自由な転職が制限されている国もあるようです。
在留期間について
技能実習
技能実習制度においては、技能実習2号修了で3年、3号就労で5年(2017年11月~)という在留が通常のパターンでしたので、そこまでしか在留期間がありませんでした。
特定技能
特定技能制度においては、技能実習2号あれば3年、3号であれば5年を修了後、1号特定技能外国人として5年間働くことができ、さらに技能が熟達すれば2号特定技能へ移行可能な分野もあり、在留期間の更新上限がなく働くことができる道が開かれました。
【建設分野での特定技能キャリアパスの例】
この特定技能2号で働いた期間というものは、将来永住者の在留資格取得の際に必要とされる日本での就労年数や居住期間に算入することが可能ですので、永住への道も開かれたということができます。
また、2号特定技能外国人は、在留期間更新の制限がなく、配偶者や子の帯同が認められているため(親の帯同は不可)、特定技能雇用契約に基づく在留であれば、ずっと日本で働くことができるようになります。
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