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外国人を雇用する場合の社会保険の適用について
2018-12-12
2024-08-28
「外国人も日本人と同じように社会保険が適用されますか?」
という質問をよくいただきます。ここではあなたの会社の外国人従業員に適用される公的保険についてくわしくまとめました。
外国人と社会保険(広義)の適用
結論から申し上げますと、日本国内で採用された外国人社員には、日本人と同じように社会保険(広義)の適用があります。原則として労働保険と社会保険の全てに加入し、労災保険以外は給料・賞与から保険料の本人負担分を控除します。
社会保険と言う場合に、広い枠組みで言う場合(広義の社会保険)と、狭い枠組みで言う場合(狭義の社会保険)があります。一般的に社会保険といえば狭義の社会保険(「健康保険」「年金保険」「介護保険」)を指すことが多いですが、このサイトでは以下の図のように5つに区分けして説明しています。
これらの公的保険は本人が希望する・しないに関わらず保険の要件に該当する人には必ず適用される強制保険ですので、要件に該当する人は全員加入しないといけません。この取り扱いは日本人だけでなく、外国人社員も原則同様です。
株式会社・合同会社について、業種や事業主の国籍、従業員の人数と関係なく、外国人社長1人の会社の場合でも強制加入ですのでご注意ください。
これらの公的保険は、外国人の新入社員を採用したときや中途採用したときにも原則として適用されます。そして次のような手続きも本人と同様です。
・被保険者取得の届出
・健康保険被保険者証の交付
・配偶者や子がいる場合の扶養家族の取り扱い
よくあるケースとして、外国人社員から、「私は5年後に本国に帰国するので、厚生年金保険に加入したくありません」と言われることがあります。このような申し出があっても、外国人だけ加入させないといった取り扱いはできません。
労働保険
労災保険について
労災保険は企業に雇用される労働者すべてに適用される強制保険ですので、日本人・外国人を問わずすべての労働者に適用されます。また、1日だけのアルバイト留学生にも労災保険は適用されます。
労災保険について詳しくはこちらを参照願います
雇用保険について
雇用保険につきましても、国籍を問わず外国人にも日本人と等しく適用されます。 一般的には失業保険と呼ばれることも多いです。以下の要件に該当する労働者は、外国人であっても、原則として、雇用保険の 被保険者となりますので、速やかに加入手続きをお願いします
雇用保険の適用要件
(※)2.の適用要件について 31日以上雇用が継続しないことが明確である場合を除き、この要件に該当します。
例えば、次の場合には、雇用契約期間が31日未満であっても、原則として、31日以上の雇用が見込まれるものとして、雇用保険が適用されます。
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雇用保険は、労働者が失業した場合、雇用継続が困難となる事由が生じた場合、労働者が自ら職業に関する教育を受けた場合等に、必要な給付を行うことにより生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を用意にするなどその就職を促進し、あわせて労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用機会の増大、労働者の能力の開発向上等を図ることなどを目的としています。
保険料については、失業等給付に係る分は事業主と労働者が折半して、失業の予防などの雇用保険二事業にかかる分は事業主のみが負担します。
一部の事業を除き、1人でも労働者を雇用する場合、事業主は雇用保険に加入しなければならず、適用事業所に雇用されている労働者は、被保険者となりますが、例外として、4か月以内の期間を定めて季節的に雇用される人、法人の代表者、個人事業主及びその同居の親族、昼間学生等は被保険者となりません。
また、パートタイム労働者は、次のいずれの要件も満たす場合は、被保険者となります。
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詳しくはこちら
外国人雇用とビザのお問合せはこちら
社会保険(狭義)
すべての法人事業所と、常時5人以上の労働者を雇用する個人事業所(サービス業等の一定の業種を除く)は、社会保険の強制適用事業所となり、そこで働く労働者は原則として被保険者となります。
契約期間が2カ月以内の労働者などは除外されますが、その期間を超えて引き続き雇用すれば被保険者となります。
パートタイム労働者(アルバイト含む)については、就業規則や雇用契約書等で定められた「1週間の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上」という要件を満たす場合には被保険者となります。また、この要件を満たさない場合でも、以下の場合には被保険者となります。
パートタイム労働者の適用対象の拡大
次のいずれの要件も満たすパートタイム労働者は、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。
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健康保険について
労働者や被扶養者が病気やケガ(業務災害及び通勤災害以外)をした場合、必要な医療給付や手当金などを支給する制度として、健康保険制度があり、社員として雇用した外国人にも適用があります。
全ての法人事業所と、常時5人以上の労働者を雇用する個人事業所(サービス業等の一定の業種を除く)は強制適用事業所となり、必ずこの保険に加入しなければなりません。
なお、強制適用事業所でない場合でも、雇用する労働者の2分の1以上の同意を得て、事業主が申請し、厚生労働大臣の認可を受ければ、適用事業所になることができます。
パートタイム労働者の取り扱いについては上記で説明した通りです。
年金保険について
厚生年金保険は、会社、工場、商店、役所などで働く労働者が加入する年金制度で、労働者の老後の生活の保障をすることが主な目的ですが、病気やケガで働けなくなった人たちの生活や、労働者が死亡した場合の遺族の生活を保障する役割も果たしています。
全ての法人事業所と、常時5人以上の労働者を雇用する個人事業所(サービス業等の一定の業種を除く)は強制適用事業所となり、必ずこの保険に加入しなければなりません。
なお、強制適用事業所でない場合でも、雇用する労働者の2分の1以上の同意を得て、事業主が申請し、厚生労働大臣の認可を受ければ、適用事業所になることができます。
パートタイム労働者の取り扱いについては上記で説明した通りです。
20歳以上60歳未満でこの保険に加入できない人は、国民年金に加入することになっています。
厚生年金保険の加入者は、支給要件を満たすと、国民年金からすべての国民に共通する基礎年金が支給され、厚生年金保険から原則として基礎年金に上乗せして報酬比例の年金が支給されます。
保険料については、健康保険料と合わせて、事業主と労働者が折半して負担します。
■ 社会保険(狭義)の適用要件のまとめ
労働時間と年収 | 1週間の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上である人(※1) | 1週間の所定労働時間又は1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満である人(※1) | |
原則年収130万円(180万円※2)未満で主に配偶者の収入で生計を維持している人 | 原則年収130万円(180万円※2)以上ある人 | ||
健康保険 | 勤務先の健康保険に加入 | 配偶者の勤務先の健康保険の被保険者(※3) | 国民健康保険の被保険者 |
年金 | 厚生年金保険に加入 | 国民年金の第3号被保険者(※3・4) | 国民年金の第1号被保険者(※4) |
※1:この要件を満たさない場合でも、上記<パートタイム労働者の適用対象の拡大>の各要件を満たすパートタイム労働者は社会保険の被保険者となります。
※2:認定対象者が60歳以上の場合(健康保険のみ)又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障がい者である場合
※3:配偶者が健康保険・厚生年金保険に加入していない場合等は、国民健康保険の被保険者・国民年金の第1号被保険者となります。
※4:認定対象者が20歳未満又は60歳以上の場合は、国民年金の第1号又は第3号被保険者になりません。
介護保険について
社会の高齢化に対応し、2000年(平成12年)度から設けられた社会保険制度です。
障害や高齢化のため介護を必要とする人に適用される保険で、障害の程度に応じて訪問介護や介護用品のレンタルなどのサービスを受けることができ、40歳以上65歳未満で医療保険に加入している全ての外国人には加入義務があり、介護保険料も支払わなければなりません。
保険料を支払うことで、介護が必要になった場合に、訪問介護、在宅介護などのサービスが1割負担で受けられます。
社会保険料の負担について
社会保険は、労災保険を除き、会社と従業員が半分ずつ払うということは法律で決まっていますし、会社によっては半分以上負担しているところもあります。このことは、日本人であればほとんどの人が知っていますが、外国人はほとんどの人が知りません。
このような事実を知らないために社会保険に入りたくないという外国人も少なくはありません。ですがその場合、ただ加入しなさい、というだけでは効果がないのではないでしょうか?
その場合、厚生年金であれば、社員である外国人の方の心身に一定の障害が残った時に受け取ることができる障害年金や、万が一死亡した場合にご遺族に対して一定額が支払われる遺族年金の制度もあるということ、そして帰国時には脱退一時金の制度があることなど、外国人にもメリットがあることとを説明した上で、加入の義務があることを研修などでしっかりと教えていくようにしましょう。
脱退一時金制度はこちら
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企業内転勤の例外
上記では「日本国内で採用」されたケースを説明しましたが、外国の企業に雇用されて日本国内の事業所に赴任する外国人の場合はどうでしょうか?
この場合、原則として雇用保険は適用されません。「企業内転勤」ビザが典型例です。
この企業内転勤で働く外国人は、通常日本国内での勤務期間が経過すれば母国へ帰国します。つまり雇用保険の失業給付を受けることがありませんので、雇用保険の被保険者とはしないという取り扱いをするのが普通です。
なお、社会保障協定が2国間で締結されているような場合、日本での健康保険や厚生年金保険への加入は免除されます。
社会保障協定についてはこちら
アルバイト留学生の例外
留学生は、資格外活動許可を取得することで、週28時間以内でアルバイトをすることができます。
この28時間という時間はフルタイムでの勤務を40時間と考えると正社員の労働時間の3/4未満となるため、健康保険や厚生年金保険の被保険者の要件を満たすことはありません。つまり留学生アルバイトについては労災保険のみが適用されるということになります。
また、日本人・外国人を問わず、大学などに通う昼間学生には雇用保険は適用されません。雇用保険の被保険者になる場合・ならない場合が定められていますが、昼間学生は専門学校、日本語学校の学生を含め、雇用保険の被保険者にはなりません。
なお、留学生は扶養家族も含めて原則として市町村の国民健康保険に加入します。そして、国民年金に第1号被保険者として加入することになりますが、学生納付特例(納付金額として加算されないが、納付期間には算入される制度)やその他免除申請をすることはできます。
社会保険料等の未納は日本に在留する外国人にとって百害あって一利なしです。ビザの更新や変更にとても大きな影響を及ぼします。「免除」は納付金額として算入されないものが多いですが、未納に比べてはるかに入管の心証がよいので、支払いが難しい方でも要件に該当する外国人の方は、積極的に免除申請をすることをおすすめします。
※社会保障協定や年金についての詳細なご相談は行政書士事務所では承っておりません。最寄りの社会保険労務士、もしくは日本年金機構にお問い合わせ願います。
顧問契約やお仕事の依頼などございましたら提携している社会保険労務士をご紹介させていただきますので、お気軽にお問い合わせ下さい。また、ビザに関してのお問い合わせは下記からお願い致します。 |
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この記事を書いた人
金森 大
国際物流会社にて本社海外業務部を経てハンガリー駐在員事務所立ち上げ、同所長として駐在。帰国後、自身の就労ビザ取得経験から外国人ビザ取得のサポートに特化した行政書士事務所を2018年開業。年間相談件数1500件以上。
【取材実績】
【講師実績】
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