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外国人雇用と雇用契約書(労働条件通知書)作成時の注意点
2018-12-18
2024-09-06
外国人の採用決定後、ビザ申請時までに「雇用契約書」(又は労働条件通知書)を作成することになります。日本人の採用時に作成するものとほぼ内容は同じですが、注意点が少し異なります。
労働法に則ったものであるほか、外国人採用の際には以下のようなことに気をつけて雇用契約書(又は労働条件通知書)を作成してください。ここでは外国人就労ビザ専門の行政書士が詳しく解説しています。
外国人雇用と雇用契約書(労働条件通知書)作成時の注意点
雇用契約書又は労働条件通知書を発行する理由
雇用契約書又は労働条件通知書を発行する理由としては以下のようなものがあります。
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上記の理由から、口頭での契約は法的には有効であってもビザ申請の観点からは論外となります。必ず書面で雇用契約を締結し、可能な限り日本語の雇用契約書に加え、その外国人が理解できる英語や母国語で翻訳文を外国人本人に渡してください。
最近では外国人本人に入管局審査官が電話調査を行うことがあり、この調査で雇用契約書と矛盾が生じる回答をすると審査にかなり悪影響が及びます。「外国人は契約内容について把握してませんよね」ということで不許可になることもあります。
雇用契約書(または労働条件通知書)は、出入国在留管理局が外国人が従事することとなる業務や雇用期間、給与額、労働・社会保険への加入の有無などの雇用条件を審査する際の大切な判断書類です。ビザ申請時に提出する他の書類と矛盾のない業務内容その他の記載が求められるところです。
なお、出入国在留管理局に申請する書類としては、労働法に則った項目が網羅されていれば雇用契約書、労働条件通知書のどちらでも構いません。
契約を結ぶとき、明らかにしなければならない労働条件
次に、雇用契約書(又は労働条件通知書)で明らかにしなければならない必須記載項目を列挙します。これらの項目は、必須記載項目が追加された2024年4月1日施行の法改正に対応したものです。
必ず明らかにしなければならないこと
以上の項目は、昇給に関することを除き、書面の交付により明示しなければなりません。 なお、労働者が希望した場合には、ファクシミリまたは電子メール等(出力して書面作成が可能なものに限る)でも可能です。 |
次のような定めをする場合には、必ず明らかにしなければならないこと
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記載内容で特に注意すべき点
雇用契約書には会社・外国人両方の記名(署名)押印が必要です。
内定通知書や労働条件通知書には外国人の署名・押印は不要です。
その他雇用契約書作成時に特に注意すべき点につきましてこれから説明していきます。
給与
給与に関しては、同様の業務に従事する日本人と同等以上にする必要がありますのでご注意ください。同様の業務に従事する日本人がいない場合や、他に従業員がいないような場合には、同地域で同じ業務に従事する他社の日本人と同等程度の賃金とする必要があります。
また、派遣社員に限らず、正社員で雇用する場合であっても時給換算した場合に最低賃金を下回っているようですと、そもそも労働法規に違反することになりかねません。もしその金額を日本人にも支給しているとなると別の問題も発生しかねませんので注意が必要です。
例えば東京で就労ビザを申請時に添付する雇用契約書に「月給14万円、昇給・賞与なし」と記載した場合に、本当に他の日本人もその条件で雇用しているのか?と疑義を持たれるのはもちろんのこと、そもそも最低賃金を下回っているかどうか審査されます。
万が一申請が受理されたとしても、審査の過程で最低賃金を割っていることや、他の日本人就労者より賃金が低いことは発覚しますので、その場合に就労ビザが交付・許可されることはありません。日本人と同等かそれ以上の賃金であることは必要最低条件となります。
賃金が安く抑えられるから外国人を雇う??
過去には日本人を雇用すると給料が高いから、安く雇用できる外国人を雇用しようと考える雇用主の方が多かったかと思いますが、そのような考え方はこれからは通用しません。外国人からすれば、日本でなくてはならない理由などなく、韓国でもシンガポールでも日本より条件がよい国がたくさんあります。
もうすでに日本は選ばれない国になりつつあることを肝に銘じ、日本で働くことを選択してくれた外国人を雇用するという流れになっています。国をまたいでの外国人従業員の争奪戦は更に激化していますので、外国人に長く務めてもらうために雇用環境を整えていくことが大切な時代になっています。 |
最低賃金の動向は常にチェックを!
2023年10月時点の最低賃金は、東京都では1,113円、神奈川県では1,112円です。時給換算でこれを下回る給与では労働法規に抵触するため、許可が下りない可能性が高いです。その他残業や休日出勤等の割増賃金にもご注意ください。
例えば東京で1日8時間、月間21日勤務の場合、月額給与が18万円では最低賃金を下回るため、ビザを取得できません。 |
【2023年10月からの最低賃金】
(時事ドットコムニュースより引用)
報酬について
報酬とは、「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」とされています。これは入管法上、ビザを取得するための報酬の考え方なので、社会保険制度上の考え方とは定義が異なります。
■報酬に含まれるもの
基本的な考え方としては、課税対象となるものは報酬に含まれると考えられます。
■報酬には含まれないもの
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職務内容
職務内容につきましては、ここで記載した職務内容が、申請人の学歴や履修科目と関連性があることはもちろん、添付する理由書や申請書類と矛盾がないような記載があることが大切です。ここに記載していない職務内容を理由書の中で述べても意味がないどころか、矛盾点を入管から指摘されかねませんので、ご注意ください。
そして誰が読んでも誤解の余地を与えないような記載が必要です。業界だけで使われている言葉や、専門用語を列記しても、入管の審査官に通じなければ意味がありません。できるだけ具体的な表記にするようにします。
過去に自己申請をした方で、職務内容に生産管理とだけ書いて不許可になったという話を聞きました。ここの書き方ひとつで審査官の審査を大きく左右します。
また、「~の業務全般」や「~の関連業務」さらには「マーケティング業務全般」という記載も抽象的で入管職員には伝わらないかと思います。マーケティング業務などは一見業務内容として正当かと思われますが、さらに具体的に、例えば「海外メディアxxを分析・解析することによるマーケティング業務」とすることで、審査官がイメージしやすくなりよい結果につながりやすくなります。
研修
入社後に短期の現場実習や研修がある企業も多いのではないでしょうか。その場合、必ず雇用契約書に明記してください。現場での現業仕事は原則禁止されている在留資格がほとんどですが、職務上必要と認められる短期間の研修の一環であれば許されていますので、雇用契約書にその旨を記載し、さらに別途研修内容やスケジュールを添付するとよいでしょう。
2020年のガイドライン変更により、現場研修につき、日本人就労者も同様に現場研修を受け、それが外国人就労者の長期的なキャリアプランの上で必要であったり、本来の職務に就くにあたり必要不可欠な経験であるような場合には、1年程度の現場研修が認められる可能性があります。
また、1年を超えて実務研修がある場合、詳細な研修スケジュールがある場合には認められうる可能性があります。ただし、上記の場合も含めて、1年以上の実務研修を経て技人国業務へ着く場合には、3年や5年の在留期間を希望しても、入管において研修実施状況の確認をするため、当初は1年の在留期間しか出ません。長期間のビザが出るものと期待されませんようにお願いします。
実務研修について詳しくはこちら
停止条件
こちらは外国人雇用特有の記載内容です。
雇用契約書には、「本契約は日本政府により入国(在留)許可されない場合は発効しないものとする」という趣旨の文言を入れることが賢明です。すでに日本に在留する留学生から就労ビザへ変更の場合であれば、「在留資格変更が許可されない場合」など、適宜文言を変えてください。
これは法律的には「停止条件」といい、許可された場合に初めて効果が生じるという性質の条件です。外国人に対しては就労ビザ取得が入社の条件であることを示すことができ、入国管理局に対しては不法就労に加担しないという会社のスタンスを示すことができます。
「許可が出なかったら雇用しないなんてことが許されるの?」という方がいますが、停止条件付の契約は外国人雇用では一般的に行われており、禁止されているものではありません。この例えが適切かどうか分かりませんが、調理師免許取得が採用の条件であるレストランに、調理師免許が取れなかった場合には採用しません、という条件を付けることはごく自然なことかと思います。
停止条件
例1:本契約は在留資格及び在留期間について日本国法務省による許可を条件とする (This contract shall be subject to the Employee’s having a proper working visa and stay permission in accordance with Immigration Laws in Japan)
例2:この雇用契約は、日本政府の正当で就労可能な在留資格の許可または在留期間の更新を条件として発効する (This agreement shall take effect on receipt from Japanese government of work and residence permission or renewal of that permission.) |
社会保険・労災など
外国人雇用の際の社会保険、労災などに関する詳細は、当ホームページの次の記事をご参照ください。
外国人の社会保険の適用についてはこちら
外国人の労災保険の適用についてはこちら
雇用契約書と労働条件通知書の違い
どちらも労働者に対して明示しなければならない項目は同じです。それではどこが違うかと言うと、労使双方の合意で成立するか、一方からの通知かという違いです。
労働条件通知書
労働条件通知書は文字通り「通知書」ですので、雇用主が法律に基づいて一定の労働条件を書面にて被雇用者である外国人に配布するものです。一方通行的な通知書です。
雇用契約書
一方で雇用契約書は、労働条件について雇用主と被雇用者である外国人が合意をしました、という証明として書面に双方の署名・捺印をしたものを2通作成し、それぞれが1通ずつ保有するという双方の契約書です。
労働基準法では労働条件通知書を書面で配布することは義務づけていますが、雇用契約書を取り交わすことまでは義務付けていません。ですので、ビザ申請で入管に提出する書類もどちらでもよいことになっています。
ただし、当事務所では労働条件通知書より、雇用契約書の締結を推奨いたします。お伝えした通り、通知書は一方通行的な通知なので、就労者が同意しているということが必ずしも反映されていません。
将来的に雇用者・被雇用者が長期に渡ってよい関係を築いていくにあたって、当初の労働条件に付き被雇用者が労働条件を確認し同意したうえで働くことには意味があると考えます。
外国人はただでさえ転職に対するハードルが低いので、就職時に「そんな話は聞いてなかった」ということがあると転職する意思に拍車がかかります。できる限り雇用契約書を締結するようにしましょう。
募集・採用・労働契約にあたって、付けてはならない条件等
社労士の先生などに一任している場合にはまず問題ないかと思いますが、雇用契約締結前の募集や採用、採用後の労働契約にあたって、記載してはならない条件があることをご存知でしょうか?
もちろんご存知の方も多いかと思いますが、法律も日々改正され、例えばひと昔前の求人では記載できた事項が現在では記載することができない事項があります。おさらいのつもりで、下記の付けてはならない条件等をご確認ください。
など |
労働条件通知書サンプル
厚生労働省で掲載されている労働条件通知書のサンプル(8か国)をご紹介します。ご自身の会社の規定などに合わせて適宜変更の上、雇用契約書や労働条件通知書を作成するためにご利用ください。
労働契約通知書サンプル
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雇用契約書作成にあたっては、労働法規に則った記載が必要です。記載項目につきましては上記サンプルのもので十分ですが、記載内容には細心の注意が必要です。労務関連の詳細につきましては行政書士はご対応できませんので、顧問先の社労士の先生やハローワークへご相談されてください。就労ビザ取得のご相談は、就労ビザに詳しい当事務所へお問い合わせ下さい。 |
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この記事を書いた人
金森 大
国際物流会社にて本社海外業務部を経てハンガリー駐在員事務所立ち上げ、同所長として駐在。帰国後、自身の就労ビザ取得経験から外国人ビザ取得のサポートに特化した行政書士事務所を2018年開業。年間相談件数1500件以上。
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